「いつかパラソルの下で」 |
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| 森絵都(角川文庫)
20歳の時、厳格な父親から逃れるように家を出てから5年間、 自由気ままな生活を送っていた栢野野々は、ある日若い女性から 「あなたのお父さんと関係してました。」と打ち明けられます。 父親が亡くなり、もうすぐ四十九日法要を迎えようとしていた矢先のこと。 厳格な父親が不倫していたとは信じられない野々は、兄妹に、 どう対処すべきかを相談します。 思えば、大学進学のために上京する以前のことは一切語らなかった父。 その過去に、厳格な父の陰の姿の原点があるような気がして、 野々達、三兄妹は父の故郷である佐渡島に、今まで一度も会ったことのない 伯母を訪ねるのです。
この物語は前半、疎遠になっていた兄妹達が、父親の不倫騒動をきっかけに 段々と結束力を高めていくところが、わくわくして面白かったし、 後半は三兄妹で「お父さんのルーツをさぐる」という名目で佐渡に行ったのに、 思いがけず伯母さん一家の歓待にあい、珍道中風になっているところが 楽しめました。 厳格な父親が不倫していた、という出だしに、もっとどろどろした 暗い内容になっているかと思いきや、明るくさらっとした内容で ラストもホッとできるもので良かったです。
そしてこの小説は、児童文学を書いてきた森さんが、初めて「大人の世界」に 挑戦して書いたもの、というのも興味深いところです。
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7月12日(日)22:54 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理
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