ずずの読書な日々
 
主に読書日記です
 



2009年7月12日を表示

「いつかパラソルの下で」

   森絵都(角川文庫)

20歳の時、厳格な父親から逃れるように家を出てから5年間、
自由気ままな生活を送っていた栢野野々は、ある日若い女性から
「あなたのお父さんと関係してました。」と打ち明けられます。
父親が亡くなり、もうすぐ四十九日法要を迎えようとしていた矢先のこと。
厳格な父親が不倫していたとは信じられない野々は、兄妹に、
どう対処すべきかを相談します。
思えば、大学進学のために上京する以前のことは一切語らなかった父。
その過去に、厳格な父の陰の姿の原点があるような気がして、
野々達、三兄妹は父の故郷である佐渡島に、今まで一度も会ったことのない
伯母を訪ねるのです。

この物語は前半、疎遠になっていた兄妹達が、父親の不倫騒動をきっかけに
段々と結束力を高めていくところが、わくわくして面白かったし、
後半は三兄妹で「お父さんのルーツをさぐる」という名目で佐渡に行ったのに、
思いがけず伯母さん一家の歓待にあい、珍道中風になっているところが
楽しめました。
厳格な父親が不倫していた、という出だしに、もっとどろどろした
暗い内容になっているかと思いきや、明るくさらっとした内容で
ラストもホッとできるもので良かったです。

そしてこの小説は、児童文学を書いてきた森さんが、初めて「大人の世界」に
挑戦して書いたもの、というのも興味深いところです。



7月12日(日)22:54 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理


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