ずずの読書な日々
 
主に読書日記です
 



趣味

夏と花火と私の死体

 乙一(集英社文庫)

タイトルからわかるとおり、ホラー小説です。

小学3年生の弥生は、ある理由で友人の五月を高い木の上から
突き落とし、死なせてしまいます。

そこに弥生の兄の健が駆けつけるのですが、五月が誤って落ちたと
勘違いし、母親に知らせようとします。

けれど大人が見れば、わざとやっとことがバレるのではないかと恐れ、
弥生は健に真実を告げないまま、死体を隠そう、と言い出します。

大人たちに見つかりそうになり、何度も隠し場所を替えるために
あちこち奔走するのですが。。。


この作品で興味深いのは、乙一氏が16歳の時に書いた、ということと、
物語を語るのが、弥生でも、健でもなく、殺された五月であることです。

「健くんが少し笑った。」とか
「弥生ちゃんの顔が青ざめた。」とか、
弥生に恨み言を言うわけでもなく、淡々とその状況を語っているのです。

そして、もっと興味をそそられたのが、一緒に収録されている
「優子」という作品です。

父親を亡くし、身寄りのなくなった清音(きよね)は政義という作家の家に
住み込みで働くようになります。
政義には「優子」という病弱の妻がいるのですが、
清音がその家に住むようになってから何日も経つのに、
一度も姿をみかけたことがないことに疑問を持ちはじめます。

食料を買いに行くのも、政義は、わざわざ隣町に行くように命じ、
近所の人々の目にもよそよそしさを感じ、
この家には何かがあると、政義の留守中に優子の部屋を調べるのです。


伏線の張り方も素晴らしいし、ラストも真実を明らかにしながらも、
どこか曖昧で、あとは読者の想像にゆだねる、といった形にしたのもいい。

これだけの作品を書きながら、作者に非凡の才能がある、という自覚が
さっぱりないのも、面白いところです。



9月21日(金)10:10 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理

ワンス・ア・イヤー

 林真理子(角川文庫)

「私はいかに傷つき、いかに戦ったか」
という副題がついています。

林さんの23歳から36歳までの自伝小説です。
欲しいものを少しずつ手に入れる、いわばサクセスストーリーで、
テンポも速いのでスラスラと読めてしまうのですが、

あまりにも赤裸々なことが書かれているため、
「林さんの旦那さんは気を悪くしていないだろうか?」と
心配になってしまいました。

けれど、この本が出版されてから15年も経つのに、
何も悪い噂を聞かないので、夫婦仲は大丈夫かと思われます(笑)

林さんはこの本の中で「もっと容姿に恵まれたかった」と語ってますが、
もしも容姿に恵まれた人が直木賞をとっても、かえって反感かって
これほどまで女性支持者は多くなかったと思います。

そして意外にも、と言っては失礼ですが、男性ファンも結構多いそうです。



9月17日(月)11:19 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理

ご挨拶

私のことを以前から知っていて、このブログを読んでくださっている方々、
いつもありがとうございます。

「ずず」なんて知らないけど、時々のぞいてた、という方々、
あるいは今日はじめてこちらをのぞいたという方々、
ご訪問、ありがとうございます。

このブログは当初、読んだ本の感想を載せるだけにしようと
思っていたのですが、
それだけでは味も素っ気もない気がして、
今後は私自身の日常生活の話もしていこうと思います。

とはいえ人付き合いが苦手な専業主婦ですので、
大したネタはないと思いますが(笑)。

今後とも、よろしくお願いしま~す!



9月15日(土)14:22 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理

夏空に、きみと見た夢

 飯田雪子(ヴィレッジブックス)

この作品に関しても、作者に関しても何も知識がなかったのですが
(ごめんなさい!)
本屋さんでこの文庫本をみつけて、帯に書いてある

「書店員さん涙する」
「30過ぎたオッサンですが、胸がキュンとなりました。」
「こんな傑作に巡り会えて良かった。」

などの言葉が気になり、読んでみました。


美人で男の子にはモテるけど、気の強い女子高生、悠里の前に
他校の見知らぬ男子高校生が訪ねてきます。

その子は天也(たかや)という親友の葬式に出席して欲しい、
天也はきみのことがすごく好きだったから、と言うのですが、
突然、面識のない人の葬式に出て欲しい、と言われても困るので
激しく拒否すると、土下座までして頼むのです。

そこで仕方なく、不貞腐れながら出席するのですが、
そのあと、悠里の身に次から次へと不思議な出来事が起こります。

やがて天也が幽霊となって悠里の前に姿を現し、
危機を救ってくれたり、悩んだ時に助言を与えてくれるように
なります。

天也の存在の大きさに気付いた悠里は、かつて自分はこれ程まで
ひとりの人と向き合ったことがあっただろうか、と自問自答し、
今までの無気力で怠惰な生き方を反省するようになるのです。


やはり泣いてしまいました。
悠里はイマドキの女子高生と思いきや、無気力で怠惰な
生き方をしているのには、ちゃんとした理由があったのです。

孤独な日々に温もりを与えてくれたのが天也なのですが、
その人は触れることも抱きしめることもできないのです。
そんなもどかしさが切なく伝わってきたのですが、
ラストが希望を持てるものなので、救われました。



9月15日(土)09:09 | トラックバック(0) | コメント(2) | 趣味 | 管理

冬のはなびら

 伊集院静(文春文庫)

逆境に立ち向かい、ひた向きに生きてきた人達の、6つの短編集です。

会社の存続が危ぶまれても、どうにか現状を維持しようと頑張る男性達、
老年の恋に目覚めて、ある決心をした女性、
亡くなった友人の意思を継ぐために未知なる世界に旅立って行った人、

そんな人達の物語です。
読みながら、うるうる涙するものではなく、
読み終わったあと、しばらくしてから感動の波がじわ~っと
訪れるような、そんな心温まる内容でした。

この短編集の中で一番気に入ったのが、
「雨あがり」です。

前半は、コンプレックスをかかえ、内向的で不器用な自分を
どうにかしたい、と思いつつも今の生き方を変えられない、
18才の男の子の心の葛藤が描かれているのですが、

後半は、それを覆すかのように、意外にも周りの人達は
彼を温かい目で見てくれていて、
彼の人柄や仕事振りを認めてくれていることに気付かされるのです。

人は誰でも、たったひとりでも自分を認めてくれる人に出会えると、
それが大きな救いや励みになるのだと、しみじみ感じました。



9月13日(木)11:33 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理


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