ずずの読書な日々
 
主に読書日記です
 


新しい順に表示

避暑地の猫

 宮本輝(講談社文庫)

軽井沢の別荘に一年に一度、避暑にやってくる別荘主の家族と、
その別荘の敷地内に住む番人の一家の、愛と憎悪の物語です。

宮本さんの作品は数冊読んでいますが、これが一番インパクトが強くて
一番好きな小説になりました。

軽井沢の森閑とした風景と、それに相対するどろどろとした
人間模様を巧くからめて、
読み手を幻想的な世界に導くのです。

思わせぶりな前ふり、
伏線の張り方、
人の心の強さや脆さ、
霧にけむる軽井沢の情景と、それに惑わされる人々の
心理描写。

もう、お見事!と言うしかないくらいの力作でした。

決して後味の良い終わり方ではなく、
あの人はどうしてあんな行動にでたのか?などの
数々の疑問を残したりするのですが、

幻想的な宮本ワールドに浸りたくなって、
何度も読み返してしまうと思います。



8月25日(土)08:42 | トラックバック(0) | コメント(2) | 趣味 | 管理

海を抱く(BAD KIDS)

 村山由佳(集英社文庫)

「BAD KIDS」で端役で出ていた人達が主人公になる、
もうひとつのBAD KIDS物語です。

都の親友、恵理は成績優秀、品行方正で生徒会の副会長も務め、
周りの信頼も厚い。
しかし恵理には誰にも言えない陰の部分があって、
それが、異常なほどの性欲を持て余している、ということでした。

しかも親友の都に対してまで恋心のような感情が芽生えてしまい、
自分は果たして男性を受け入れることができるのか、確かめるためと、
抑えきれない性衝動にかられたため、夜の街をさまよい歩き、
声をかけてきた見知らぬ男性と関係をもってしまいます。

そしてホテルから出てきたところを同じ高校に通う光秀に目撃され、
誰にも言わないことを条件に、
「私といつでも寝ていい。」と彼にまで関係をせまるのです。

最初はお互いの欲望を満たすためだけの関係でしかなかったのですが、
それぞれが抱える家庭の事情に向き合い、苦悩していくうちに、
唯一、自分をさらけ出せる、かけがえのない存在であることに気付くのです。


私にとっては、かなり衝撃的な内容でした。
女の子の性衝動をテーマにした話は、今まであまり
読んだことがなかったし、
それを女性の作家がリアルに描いた、というところが強烈な印象を
残しました。

けれど、軽薄な官能小説のようにならなかったのは、
若いふたりが、真面目に自分の性衝動と向き合い、
苦悩していたところが良かったのだと思います。

恵理が、自分がかかえている欲望が、どのような種類のものなのか、
図書館で書物を調べるところなどは、いかにも真面目な生徒らしく、

あるいは周りからは遊び人で軽いヤツと思われている光秀も、
実は好きでもない人と身体の関係を持ったことなどなく、
恵理との関係に疑問をもちながらも、若さゆえについ、
ひとり暮らしの部屋に恵理を呼んでしまい、
その度に後悔し、恵理を理解しようと、心の交流も
はかろうとするところなど、
そこらへんにいる男の子よりも、よほど好青年じゃないか、と
思ったりもしました。

そして、都。

やはり都のキャラは好きです。
我が道を行きながらも、ちゃんと周りの人達も見てる。
何もかも、わかってるけど、知らないふりしててくれる都。

こんな素敵な友達がいたら、私も恵理のような感情を持ってしまうのではないか、と思ってしまいました。



8月23日(木)10:43 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理

BAD KIDS

 村山由佳(集英社文庫)

高校生でラグビー部の隆之は、幼い頃からの友人で
部活のチームメートでもある宏樹に恋心を抱いていました。

そんな隆之を絶好の被写体と、追い続ける写真部の都は
20才以上も年上のカメラマンとの関係に苦悩していて、
隆之の切ない心情にも気付いて彼に近づきます。

いたわり合うようになったふたりの関係は、
ハタから見れば、付き合っているようにしか見えないのですが、
お互い、道ならぬ恋への思いをぶつけ合える、
唯一の存在であったのです。

やがて卒業の時期が近づき、それぞれの思いに決着をつける時を
向かえるのですが。。。


時々、エッセイと小説のイメージがまるで違う作家さんがいますが、
村山さんも、そのひとりではないかと思われます。

以前読んだエッセイが、とても爽やかで好印象を持って
しまった私は、性描写がリアルだったりした小説を、
今まで、なかなか受け入れることができませんでした。

イメージを自分の中で作りすぎてしまったのでしょう。

けれども文体が綺麗で読みやすい村山さんの小説は、
いつかは受け入れられるような気がしていました。

こんなことを言うと変人に思われるので、あまり公には
していませんが、
実は同性愛をテーマにした話に、昔からとても興味を持っています。

小説でも、映画でも。

そのせいか、この小説はとてもすんなりと、受け入れることができました。

受け入れられた理由はそれかい!とどこかから
ツッコまれそうですが(笑)

一見、自由奔放で、好き勝手に生きているように見える都が、
とても繊細で友達思いなところにも好印象を持ちました。

都がでてくる話が、もうひとつあるそうなので、それも読んでみたいと思います。



8月21日(火)10:46 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理

死ぬほど好き

 林真理子(集英社文庫)

結婚適齢期の女の人達の心の闇を描いた八つのお話が入っている
短編集です。
林さんの小説は、きわどい描写があるものが多いのですが、
これもかなりきわどい所があります。
ですが、ただエロいだけではなく、ちゃんと考えさせられて
しまうところが、林さんのすごいところなのだと思います。

昔、大好きだったアイドル歌手に偶然出会って、
複雑な心境になる人あり、

離婚した元夫と書類上の手続きのために
何度か会っているうちに、またいい関係に戻る人あり、

海外で働く超遠距離恋愛の恋人に会いに行く人あり、

自分とはまったく異なった生活をしている人々なのに、
こんな時は、こんな心境になるのだろうな、と
うなづきながら読んでしまいました。



8月17日(金)14:48 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理

岳物語

 椎名誠(集英社文庫)

椎名さんちのご長男、「岳君」のお話です。
両親が山登りが好きなので「岳」という名前がつけられたのに、
岳君は川くだりや釣りが好きです。

そんな岳君の日常生活が父親の目線で書かれています。
ハラハラドキドキしながらも、腕白少年の岳君を
少し距離を置いてみている、
その距離感がとても良いのです。

良いなぁと思いながらも、自分はこんな子育てはできないと思いました。
いくら信用のおける人にあずけるとはいえ、小学生の子どもを一週間も
旅に出すなんてこと、できそうもありません。

こんな過保護なところが自分のいけないところかもしれないなぁ、などと
自分のことと比べながら、楽しんで読める本でした。

椎名さんの本を読んだのは初めてでしたが、
とても読みやすい文体で、椎名さん自身にも好感もてたし、
この「岳物語」には続編もあるそうなので、
ぜひ読んでみたいと思います。



8月16日(木)21:37 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理


(130/131ページ)
最初 122 123 124 125 126 127 128 129 >130< 131 最後