ひるの幻 よるの夢 |
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| 小池真理子(文春文庫)
六つの短編からなる小説ですが、どれも似たようなお話ではなく、 それぞれ趣向をこらした作品になっています。
報われなかった恋を偲んだり、あるいは報われても、 ちょっとしたキッカケで愛情が歪んだ形となり、 狂気を生み出したり。
そんな心理描写や情景描写がとても巧く描かれていて、 楽しく読むことができました。
この中で特に印象的だったのが 「秋桜の家」と「シャンプーボーイ」です。
「秋桜の家」は 再婚した相手の息子に、レストランで初めて会った時から惹かれ、 その息子の方も自分を意識していることを感じ、 夫と、息子の間で感情が揺れ動くお話なんですが、
その息子が意外なことを告白した日の翌朝、 霧でぼんやりと霞んだ秋桜畑の中を去っていく、 その情景描写がとても綺麗で、ため息がもれたほどでした。
「シャンプーボーイ」は 主人公が通っている美容室の若い男の子が、ある事情により、 一人暮らしの自分の家に居候することになったお話です。 お金がなくて部屋代が払えない代わりに、その男の子は 主人公に毎日シャンプーしてくれるのです。
親子ほど歳の離れた若い男の子なのに、 たくましい腕でシャンプーしてもらっている時は、あまりに心地よくて、 幼い子どもに戻ったような気分になるのです。
私もオバサンと呼ばれる年齢なので、その気持ちには充分、 共感できました(笑)
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9月5日(水)11:22 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理
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