ずずの読書な日々
 
主に読書日記です
 



2007年8月23日を表示

海を抱く(BAD KIDS)

 村山由佳(集英社文庫)

「BAD KIDS」で端役で出ていた人達が主人公になる、
もうひとつのBAD KIDS物語です。

都の親友、恵理は成績優秀、品行方正で生徒会の副会長も務め、
周りの信頼も厚い。
しかし恵理には誰にも言えない陰の部分があって、
それが、異常なほどの性欲を持て余している、ということでした。

しかも親友の都に対してまで恋心のような感情が芽生えてしまい、
自分は果たして男性を受け入れることができるのか、確かめるためと、
抑えきれない性衝動にかられたため、夜の街をさまよい歩き、
声をかけてきた見知らぬ男性と関係をもってしまいます。

そしてホテルから出てきたところを同じ高校に通う光秀に目撃され、
誰にも言わないことを条件に、
「私といつでも寝ていい。」と彼にまで関係をせまるのです。

最初はお互いの欲望を満たすためだけの関係でしかなかったのですが、
それぞれが抱える家庭の事情に向き合い、苦悩していくうちに、
唯一、自分をさらけ出せる、かけがえのない存在であることに気付くのです。


私にとっては、かなり衝撃的な内容でした。
女の子の性衝動をテーマにした話は、今まであまり
読んだことがなかったし、
それを女性の作家がリアルに描いた、というところが強烈な印象を
残しました。

けれど、軽薄な官能小説のようにならなかったのは、
若いふたりが、真面目に自分の性衝動と向き合い、
苦悩していたところが良かったのだと思います。

恵理が、自分がかかえている欲望が、どのような種類のものなのか、
図書館で書物を調べるところなどは、いかにも真面目な生徒らしく、

あるいは周りからは遊び人で軽いヤツと思われている光秀も、
実は好きでもない人と身体の関係を持ったことなどなく、
恵理との関係に疑問をもちながらも、若さゆえについ、
ひとり暮らしの部屋に恵理を呼んでしまい、
その度に後悔し、恵理を理解しようと、心の交流も
はかろうとするところなど、
そこらへんにいる男の子よりも、よほど好青年じゃないか、と
思ったりもしました。

そして、都。

やはり都のキャラは好きです。
我が道を行きながらも、ちゃんと周りの人達も見てる。
何もかも、わかってるけど、知らないふりしててくれる都。

こんな素敵な友達がいたら、私も恵理のような感情を持ってしまうのではないか、と思ってしまいました。



8月23日(木)10:43 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理


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