「あん」 |
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| ドリアン助川(ポプラ文庫)
小さなどら焼き店「どら春」を営む千太郎のところに年取った女性が訪ねて来て 時給は半分でいいから自分を雇ってくれないか、と頼みます。 どう見ても70歳を超えているその人に力仕事は無理だと一旦は断るのですが、 その数日後、女性の持ってきた手製の餡を食べた時から考えが一転し、 どら春の餡を作ってもらうことにします。 その女性、徳江から餡の作り方を学びながら、千太郎も、どら焼き作りに こだわりを持つようになるのです。 そのうち「どら春の味が変わった」と口コミで評判が広がり、 みるみるうちに売り上げを伸ばしていくようになります。 閉店時間を待つことなく完売してしまうこともあり、このまま順調に 商売がすすんでいくかと思いきや、 ある時から、徳江がかつて伝染病の患者だったことが知れ渡り、 客足が一気に途絶えます。 自ら「どら春」を去る徳江に何も言えないまま、千太郎は伝授された、どら焼き作りを続けます。 売り上げが一気に落ち込んだため、店のオーナーから「どら焼きはやめて お好み焼き屋にしよう。」と提案されながらも、どら焼きにこだわる千太郎は 店の常連客であったワカナを伴い、徳江のいる施設を訪ねます。 そこで徳江の想像を絶する過去を知り、自分自身も人に言えない過去を持つ千太郎は 徳江のこだわる「この世に自分が存在する意味」について 向き合うこととなるのです。
深いテーマで決してハッピーエンドにはならないのですが 読後、非常に充実感がありました。 徳江と千太郎の、お互いがどれだけ自分にとって大切で必要な存在か わかっているのに、二度と一緒に働くことのできない切なさがひしひしと伝わって来て 悲しかったです。 映画化もされているので、いつか観てみようと思います。
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これが今年最後の更新になります。 皆様、どうか良いお年を!
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12月30日(水)22:08 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理
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