「天国はまだ遠く」 |
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| 瀬尾まいこ(新潮文庫)
仕事にも人間関係にも行き詰まり、何もかもいやになった23歳の千鶴は 自ら命を絶とうと特急電車に乗り、山奥の民宿にたどり着きます。 2年ぶりにお客さんを迎えるというその宿で睡眠薬を飲むのですが 死に切れずに、そのまましばらく民宿に世話になります。 ひとりで民宿に暮らす田村さんのさりげない優しさに触れ、 村の人達と打ち解けていくうちに、千鶴は生きることの意味を みいだしていくのです。
短い小説ですが、いいお話でした。 民宿の田村さんが、すごくいい! 若い男性、という設定なので、同じく若い女性である千鶴に もっと興味を持つかと思いきや、大してそんなそぶりもみせず、 それでいてさりげなく気の利いたことをしてくれて、なおかつ 恩着せがましくないのです。 しかし田村さんにも色々と事情があり、その土地を離れたくても 離れることができなくて、千鶴もまた、その土地に魅力を感じながらも ここは自分のいるべき場所ではない、と気付き、離れる決心をするところが 切ないのです。 けれどラストは、やはりやってくれましたね、田村さん。 「あんたみたいな人は長生きすると思う。」と千鶴に言うのですが、 この言葉は千鶴がその後、強く生きていくことへの暗示に なっているような気がします。 いい人だなぁ。田村さん。 町内にひとりはいて欲しいなぁ。田村さん。
読後、元気がもらえる物語でした。
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5月31日(月)23:15 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理
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