ずずの読書な日々
 
主に読書日記です
 



2007年9月を表示

夏空に、きみと見た夢

 飯田雪子(ヴィレッジブックス)

この作品に関しても、作者に関しても何も知識がなかったのですが
(ごめんなさい!)
本屋さんでこの文庫本をみつけて、帯に書いてある

「書店員さん涙する」
「30過ぎたオッサンですが、胸がキュンとなりました。」
「こんな傑作に巡り会えて良かった。」

などの言葉が気になり、読んでみました。


美人で男の子にはモテるけど、気の強い女子高生、悠里の前に
他校の見知らぬ男子高校生が訪ねてきます。

その子は天也(たかや)という親友の葬式に出席して欲しい、
天也はきみのことがすごく好きだったから、と言うのですが、
突然、面識のない人の葬式に出て欲しい、と言われても困るので
激しく拒否すると、土下座までして頼むのです。

そこで仕方なく、不貞腐れながら出席するのですが、
そのあと、悠里の身に次から次へと不思議な出来事が起こります。

やがて天也が幽霊となって悠里の前に姿を現し、
危機を救ってくれたり、悩んだ時に助言を与えてくれるように
なります。

天也の存在の大きさに気付いた悠里は、かつて自分はこれ程まで
ひとりの人と向き合ったことがあっただろうか、と自問自答し、
今までの無気力で怠惰な生き方を反省するようになるのです。


やはり泣いてしまいました。
悠里はイマドキの女子高生と思いきや、無気力で怠惰な
生き方をしているのには、ちゃんとした理由があったのです。

孤独な日々に温もりを与えてくれたのが天也なのですが、
その人は触れることも抱きしめることもできないのです。
そんなもどかしさが切なく伝わってきたのですが、
ラストが希望を持てるものなので、救われました。



9月15日(土)09:09 | トラックバック(0) | コメント(2) | 趣味 | 管理

冬のはなびら

 伊集院静(文春文庫)

逆境に立ち向かい、ひた向きに生きてきた人達の、6つの短編集です。

会社の存続が危ぶまれても、どうにか現状を維持しようと頑張る男性達、
老年の恋に目覚めて、ある決心をした女性、
亡くなった友人の意思を継ぐために未知なる世界に旅立って行った人、

そんな人達の物語です。
読みながら、うるうる涙するものではなく、
読み終わったあと、しばらくしてから感動の波がじわ~っと
訪れるような、そんな心温まる内容でした。

この短編集の中で一番気に入ったのが、
「雨あがり」です。

前半は、コンプレックスをかかえ、内向的で不器用な自分を
どうにかしたい、と思いつつも今の生き方を変えられない、
18才の男の子の心の葛藤が描かれているのですが、

後半は、それを覆すかのように、意外にも周りの人達は
彼を温かい目で見てくれていて、
彼の人柄や仕事振りを認めてくれていることに気付かされるのです。

人は誰でも、たったひとりでも自分を認めてくれる人に出会えると、
それが大きな救いや励みになるのだと、しみじみ感じました。



9月13日(木)11:33 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理

ひるの幻 よるの夢

 小池真理子(文春文庫)

六つの短編からなる小説ですが、どれも似たようなお話ではなく、
それぞれ趣向をこらした作品になっています。

報われなかった恋を偲んだり、あるいは報われても、
ちょっとしたキッカケで愛情が歪んだ形となり、
狂気を生み出したり。

そんな心理描写や情景描写がとても巧く描かれていて、
楽しく読むことができました。

この中で特に印象的だったのが
「秋桜の家」と「シャンプーボーイ」です。

「秋桜の家」は
再婚した相手の息子に、レストランで初めて会った時から惹かれ、
その息子の方も自分を意識していることを感じ、
夫と、息子の間で感情が揺れ動くお話なんですが、

その息子が意外なことを告白した日の翌朝、
霧でぼんやりと霞んだ秋桜畑の中を去っていく、
その情景描写がとても綺麗で、ため息がもれたほどでした。

「シャンプーボーイ」は
主人公が通っている美容室の若い男の子が、ある事情により、
一人暮らしの自分の家に居候することになったお話です。
お金がなくて部屋代が払えない代わりに、その男の子は
主人公に毎日シャンプーしてくれるのです。

親子ほど歳の離れた若い男の子なのに、
たくましい腕でシャンプーしてもらっている時は、あまりに心地よくて、
幼い子どもに戻ったような気分になるのです。

私もオバサンと呼ばれる年齢なので、その気持ちには充分、
共感できました(笑)



9月5日(水)11:22 | トラックバック(0) | コメント(0) | 趣味 | 管理


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